共同研究

東アジアの伝統的木造船建造および操船技術の比較研究

2016年度全体会議の開催

日程:2017年3月25日(土)
会場:神奈川大学日本常民文化研究所
参加者:小熊 誠、織野英史、昆 政明、廣瀬直樹、前田一舟、王 蕾、姜婧、兪鳴奇

全体会議における報告(台湾の伝統的木造船)

 2014年度から実施してきた、共同研究の最終年度にあたり、調査報告および報告会の内容について検討した。まず、昆より2017年度の日程の説明があり、織野、廣瀬、前田より進行状況について報告があった。織野は船材接合技術に関する中国調査の成果を報告した。廣瀬は中国福建省の小型木造漁船(サンパン)の実測図と各部名称および、造船工程の写真報告を行った。ここでは、船体の各部名称の確認が困難であることが王より指摘され、今後の検討課題として認識された。前田は台湾調査について写真を使って報告した。次いで、2017年度に予定されている報告書、報告会に関し話し合いを持った。報告書の刊行は2017年度末を刊行予定とし、日程を詰めることとした。報告会に関しては第2回共同研究フォーラムとし、テーマは「東アジアの船」とした。内容は、東アジアの伝統的木造船の構造と造船技術を北陸、沖縄、中国を対比させ、各自これに沿った報告を行うこととした。サブタイトルについては、後のメール会議で「木造船技術とその構造」とした。会議後、中国福建省泉州市で収集し、3号館企画展示室に展示中の中国船10分の1模型と中国の船大工道具を見学した。

(文責:昆政明)

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木造船の造船技術及び操船技術の調査

日程:2017年3月24日(金)~3月26日(日)
調査先:東京海洋大学附属図書館、立正大学図書館、神奈川大学日本常民文化研究所、千葉県浦安市郷土博物館
調査者:前田一舟

 ■ 写真1 東京海洋大学越中島キャンパス内国指定重要文化財の明治丸  ■ 写真2 浦安市郷土博物館の屋外展示場「浦安のまち」


写真3 浦安市郷土博物館の「船の展示室」

 3月24~26日は「東アジアの伝統的木造船建造および操船技術の比較研究」の共同研究会へ参加するのに合わせて、東京都内及び千葉県浦安市等で日本の木造船に関する資料調査を実施した。
 24日は東京海洋大学越中島キャンパス内で展示されている国指定重要文化財の明治丸を見学した。その帆付汽船は日本唯一現存する鉄船であるが、鉄船の造船技術から木造船の構造を知る上でも帆走方法や船具等が極めて参考となった。その後、図書館(越中島分館)で造船関係の文献資料を調べた。また、立正大学図書館では沖縄の船に関する文献資料も調べた。
 25日は日本常民文化研究所内で『アチックマンスリー』を閲覧し、木造船や南島の研究の動向を確認した。
 26日は千葉県浦安市郷土博物館で船大工の造船用具及び製作過程の映像等を確認した。また、木造船では浦安市内で活躍したマキ船やベカ舟、打網船、その船具等も実見し、関東河川等で使用する船の造船技術や操船技術を把握した。
 以上の調査では、近世から現代にかけて残された造船技術と操船技術を把握した。それを参考に沖縄の船大工の技術伝承が和船の造船技術と深い関わりをもっていることを再確認できた。しかしながら、その歴史的位置づけの課題が出てきた。また、その浦安市郷土博物館が木造船の教育普及活動を独自に確立した点は船大工の造船技術を伝承し続けるだけでなく、地域らしさの風景をも伝えている。それは極めて魅力ある民具研究と博物館活動であった。

(文責:前田一舟)

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台湾台北市及び基隆市における木造船の調査

日程:2017年3月10日(金)~3月13日(月)
調査先:台湾台北市国立台湾博物館、国立台湾大学人類学博物館、基隆市八斗子漁村文物館、陽明海洋文化芸術館、漁村等
調査者:前田一舟、新垣夢乃

写真1 基隆市和平島住民へ聞き取り調査

写真2 基隆市和平島の漁船

 昨年度の中国福建省泉州市及び福州市等における木造船の造船技術と操船技術の調査に引き続き、今回はその地域の対岸にある台湾北部を対象地に設定した。
 3月10日は台北市到着後、国立台湾博物館で先住民族の出土遺物(船)を調べる。その後、新垣夢乃氏と合流し、基隆市へ移動した。
 11日の午前は基隆市和平島の漁村と港を歩き、港に停泊する木造船を調べる。中国福建省沿岸部でみられるサンパン(船)は実見できなかったが、日本の木造船の造船技術で建造されたと思われる漁船を確認した。その船は舳先に和船の特徴をもつ。そして、午後は八斗子漁村文物館の許焜山、沈得隆、藍紹芸の諸先生と台湾船史研究の賴竜雄先生と会い、漁村文物館による漁村の記録・保存の活動、民具の収集と展示、教育普及活動等について説明を受けた。その後、賴先生の案内で和平島及び八斗子の漁村における1947年頃の日本人と琉球人の居住区や造船所、カジキ漁と漁船、水産加工所等を踏査し、聴取した。とくに地元住民がテンマと呼ぶ木造船は意外な文化的要素であった。
 12日は基隆市の陽明海洋文化芸術館で展示物の漁具や船の模型、写真を調べ、サンパン等の木造船について館の職員の体験談を伺った。その後、台北市へ移動し、国立台湾大学人類学博物館で展示する独木舟(丸木舟)とヤミ族のタタラ(船)を調べた。
 最終日の13日は帰国した。
 以上の調査では、近代台湾でみられた木造船で福建省及び広東省沿岸部より来歴したサンパンや大型帆船(研究者はジャンクと呼ぶ)がみられた。その操船技術は帆船が主だが、サンパンは両脇に櫂のような船具が近代写真にみられた。その一方、先住民族が使用した独木舟(丸木舟)とヤミ族のタタラもみられた。その操船技術は河川や近海を行き来するため、主に櫂であった。ただし、基隆市の漁村には艀の船が箱形(櫂を使用)とテンマ(櫓を使用)の2種類があり、日本人居留地は和船が使用されていた。聴取調査では和平島に琉球人のサバニ(沖縄の木造船)も確認できたが、その造船技術が現在の漁村に伝承されていないと思われる。また、許焜山先生が主宰する八斗子漁村文物館は漁師等から体験談を聴取し、写真や映像等で記録している。その中でも体験談をまとめた館の機関誌の『東北風』(創刊号~第7号)は日本の博物館や研究所において極めて参考になる民俗誌であった。

 ■ 写真3 基隆市八斗子の艀(箱型船)  ■ 写真4 国立台湾大学人類学博物館のヤミ族のタタラ(船)

(文責:前田一舟)

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