共同研究

昭和戦前期の青年層における民俗学の受容・活用についての研究

岩手県雫石町立図書館田中喜多美文庫等の調査

日程:2017年12月15日(金)~12月17日(日)
調査先:雫石町立図書館、雫石町歴史民俗資料館
調査者:丸山泰明、木村裕樹、小林光一郎

 田中喜多美(1900〜1990)は、岩手県雫石町出身の民俗学者・郷土史家である。尋常高等小学校を卒業後、高等科に進学するものの家庭の事情により退学。農業に従事しながら、全くの独学で勉学読書に励んだ。後に岩手県教育会、岩手県庁に勤務し、岩手県の歴史と文化についての研究・振興に多大な功績をあげた。その業績は『田中喜多美著作集』(角川書店、1987年)にまとめられている。
 田中は渋沢敬三とアチックミューゼアム(現在の神奈川大学日本常民文化研究所)と関わりがあった人物でもある。1933年8月には上京して渋沢邸を訪問しており、渋沢や早川孝太郎・高橋文太郎たちとともに撮影した写真が残されている。
 本共同研究において主要な研究対象としている大日本連合青年団郷土資料陳列所にも、田中は山小舎の模型やかんじきなどの資料を、少なくとも10点あまり寄贈していることが確認できる。今回の調査は、「中央/東京」である日本青年館や大日本連合青年団の民俗学に関する事業を、「地方」の人々はどのように受け止めて取り組んだのかを、田中喜多美という人物を通して探ることを企図して実施したものである。
 12月16日には、雫石町立図書館にて田中喜多美文庫の調査を行なった。残念ながら田中と日本青年館/大日本連合青年団との直接の関わりを示す資料を見つけることはできなかった。ただし、田中が作成した1930〜40年代を中心とする新聞切抜のスクラップブックを通して、日本青年館などに関わっていた時代における田中の関心や当時の岩手県の社会や生活文化について知ることができ、一つの成果を得ることができた。
 17日には、雫石町歴史民俗資料館に収蔵・展示されている、田中が収集したオシラサマに関する資料等を含めた展示物について、職員の方から解説をうかがいながら見学した。
 雫石町立図書館に保管されている田中が残した膨大な新聞切抜のスクラップブックには、岩手県内の山々における登山やハイキングのガイド記事、史蹟名勝天然紀念物に値するような名木や老木などを紹介する記事、柳宗悦らによる民芸運動に関する記事も貼り付けられていた。民俗に対する関心が高まった昭和戦前期は地方の文物が観光産業の視点も交えながら着目されていった時代でもあったことを、改めて気づかされた調査となった。

(文責:丸山泰明)

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