お知らせ

第4回国際シンポジウム「二つのミンゾク学 —多文化共生のための人類文化研究—」 終了報告

2012年12月26日

  さる2012年12月8日(土)および9日(日)の2日間にわたり、国際常民文化研究機構の第4回国際シンポジウム「二つのミンゾク学 —多文化共生のための人類文化研究—」が開催されました。1日目が国際シンポジウム「民族の交錯—多文化社会に生きる—」、2日目が公開研究会「ミンゾク研究の光と影—近代日本の異文化体験と学知—」の構成をとり、多文化化した現代の日本社会におけるその実態と、今後多文化共生社会を築くに際し文化人類学・民俗学がいかに寄与できるかが論議されました。
初日は、一般にも向けたその応用編とも呼べる内容で、スタンフォード大学名誉教授ハルミ・ベフ氏の基調講演で始まり、南米移民、アイヌ語の“母語”運動、無国籍、在日韓国・朝鮮人から見た同化と差別、異文化間結婚、多文化教育の実践と博物館をテーマにした6人の講師により、日本における多文化社会の諸相とその問題点が指摘されました。

Ⅰ部: 国際シンポジウム 12月8日(土) 「民族の交錯—多文化社会に生きる—」

総合討論の様子 記念撮影

 2日目には、「第二次大戦中および占領期の民族学・文化人類学」(代表:泉水英計)グループのこれまでの研究成果が公開研究会の形で披露されました。鳥居龍蔵・石田英一郎・岡正雄などなじみある大家から平野義太郎などの名が登場し、戦時における民族学者の動向、去就が論じられ、戦後はGHQと人類学者の関係、米国における日本研究の系譜など興味深い話題が次々に具体的な資料に基づいて提示され論議されました。

Ⅱ部: 公開研究会 12月9日(日) 「ミンゾク研究の光と影—近代日本の異文化体験と学知—」

  2日間とも、会場は熱気に包まれ、来聴者の構成は異なるもののこうした問題にみな関心があるのだと主催者側として実感しました。折しも、2012年は柳田没後50年、来年2013年は日本常民文化研究所の創設者・渋沢敬三没後50年の記念すべき年となります。旧民族学振興会の資料が本研究所に所蔵されている縁を改めて思い起こします。これらの資料は1934年設立の日本民族学会(現在の日本文化人類学会)の学会活動を裏付ける根幹の資料でありながら、解読はいまだになされていません。今回の公開研究会では、これらの資料も活用し、当時行われていた組織的な民族誌調査の追跡を現地調査により行い、新たな情報を発掘した成果が公開されました。英米を中心に展開していた人類学の諸理論や調査方法論からの影響を具体的に検証したほか、同時期の学術界一般、さらには日本社会の時代状況における民族学会の位置と役割の一面が、フロアーからの意見も含め多面的に論議されました。
最終年度に予定されている第5回国際シンポジウム「(仮題)渋沢敬三の資料学」、国際常民文化研究における渋沢敬三の学問の有効性を問う懸け橋としても、さまざまな示唆を与えてくれた2日間にわたる研討の内容でした。この場を借りて改めて講師のみなさまに謝意を表したいと思います。     (佐野 賢治)

公開研究会「Suye MuraとVillage Japan —英語圏人類学における2つの古典的日本村落研究の比較から学ぶもの—」終了報告

2012年11月14日

去る11月2日、神奈川大学横浜キャンパスにおいて、北海道大学大学院教授、桑山敬己氏を講師にお招きし「Suye MuraとVillage Japan—英語圏人類学における2つの古典的日本村落研究の比較から学ぶもの—」と題した公開研究会を開催いたしました。
当日は桑山氏と共同で新池の調査を行っている日本女子大学教授の中西裕二氏も同席し、会場からの様々な質問に対応され自由な空気の中で進められました。

第4回国際常民文化研究機構 国際シンポジウムのご案内

2012年10月19日

来る12月8日(土)および9日(日)の2日間にわたり、本機構の4回目となる国際シンポジウムを下記のとおり開催いたします。

 「二つのミンゾク学 —多文化共生のための人類文化研究—」
Minzokugakus: Two Ways to Promote Multicultural Understanding

Ⅰ部: 国際シンポジウム 12月8日(土) 10:30-17:30 (16号館セレストホール)
      「民族の交錯—多文化社会に生きる—」
Ⅱ部: 公開研究会 12月9日(日) 10:00-17:30 (16号館視聴覚ホールB)
      「ミンゾク研究の光と影—近代日本の異文化体験と学知—」
会場:神奈川大学横浜キャンパス (東急東横線 白楽駅徒歩13分) 

 1日目の基調講演には、米国スタンフォード大学名誉教授ハルミ・ベフ氏をお迎えし、多文化社会としての日本をその歴史的な背景に遡ってお話いただき、続いて移民や在日の人々、アイヌの言語などを例に現代の多文化社会の諸相について考察します。
 2日目は本機構共同研究「第二次大戦中および占領期の民族学・文化人類学」グループのこれまでの研究成果の発表の場として、主に戦中・戦後の民俗学・人類学について議論します。

  詳しくはこちら

■ 事前申し込み不要、参加無料 ■
どなたでもご参加いただけます。皆様のご参加をお待ち申し上げます。

日本常民文化研究所 第16回常民文化研究講座のお知らせ

2012年10月09日

当機構の母体である、神奈川大学日本常民文化研究所の第16回常民文化研究講座が開催されます。

「大津波と集落-三陸の集落に承け継がれるもの-」
日時 2012年11月10日(土)13:00~17:10
会場 神奈川大学2号館地下演習室

講師・論題
●月舘 敏栄 三陸沿岸津波と集落復興の歴史と課題
●植田今日子 津波被災者が帰ろうとする海の領域意識
●川島 秀一 三陸大津波と漁村集落
●重村 力  集落から見た津波被災と復興の課題

詳しくはこちら→ 神奈川大学日本常民文化研究所ウェブサイト

講座は申込み制となっておりますのでご注意ください。
また、お問い合わせは直接日本常民文化研究所宛にお願いいたします。

公開研究会のお知らせ 「Suye MuraとVillage Japan —英語圏人類学における2つの古典的日本村落研究の比較から学ぶもの—」

2012年10月09日

本機構の「共同研究の共同研究」をテーマとした公開研究会も8回目を迎えました。
今回は、北海道大学大学院教授の桑山敬己氏をお迎えし下記のテーマでご講演いただきます。

テーマ:「Suye MuraとVillage Japan—英語圏人類学における2つの古典的日本村落研究の比較から学ぶもの—」
講師: 桑山敬己氏 (北海道大学大学院教授・文化人類学)
日時: 2012年11月2日(金) 15:00~17:00 
場所: 神奈川大学横浜キャンパス 1号館308会議室

    エンブリー(John Embree)の須恵村(熊本県)、ビアズレー(Richard Beardsley)らの新池(岡山県)研究。
    戦後の英語圏人類学におけるふたつの日本村落研究の対象には大きな違いがあった。 
    行政村と自然集落の違いに着目して、いくつかの観点から比較を試みる。

こちらからさらに詳しい要旨がご覧いただけます。

ポスター

要旨

■ 事前申込み不要、参加無料

公開研究会 「海を越えての交流-民俗、祭祀、芸能の面から-」 (終了報告)

2012年10月01日

「アジア祭祀芸能の比較研究」グループ 成果発表会報告

2012年9月15日(土) 
プログラムに従って進行した。午前中は、はじめに「アチックフィルム・写真に見るモノ・身体・表象」グループの高城玲、羽毛田智幸氏の解説付きで、アチックフィルム「朝鮮多島海」(1936年)、「パイワン族の探訪記録」(1937年)をみた。つづいて静止画による解説も加えられた。昼食をはさんで、当時の映像、写真についての討議をした。

会場の様子

 1930年代の映像、写真を現地に持参して、現地の住民とともに状況を確認するというのは現地調査の基礎的な方法で、いくつかの発見があったという(*)。その詳細は、同グループの報告書に記されることになる。ここでは午後の討議を経て、印象に残った点を摘記しておく。第一は、アチックフィルム・写真は当時の官憲の協力のもとになされていて、必ずしも「ありのまま」の姿を伝えていない。場合によってはセットして撮影したものもあるだろう。第二は、それにもかかわらず、踊りの所作、子供のあそび、集落全体の光景、当時の映像に付随して採録された歌などは興味深かった。それらは、図像という手段ならではのものである。これをどのように掘り下げていくかは、グループを越えての課題であろう。第三に、上記第二点との関係で、台湾排湾族の踊りがフィリピンのルソン島の踊りとよく似ているという会場からの指摘があったことがあげられる。これは究明すべき点といえる。
 9月15日の午後はさらに、以下の研究発表とそれを踏まえての討議があった。
1. 星野紘「アジアの祭祀芸能の舞の諸相」
2. 皆川厚一「インドネシア、バリ社会において中国由来とされるいくつかの文化的事例について」
星野紘氏の発表では、西アジア、南アジア、東アジアに共通する要素として「旋回」を取り上げた。その一部を映像で示しつつ、さらに、範囲を狭めて「日本、中国、韓国」の旋回舞踊を分析した。ここでは、日本の「順、逆、順」の旋回に独自のものがあるという趣旨の説明があった。これに対しては、済州島神房の巫舞をも踏まえる必要があるという意見が提示された。また、星野氏の指摘のなかでは、日本の伝統的な解釈「舞い」と「踊り」の区別に対して実際には「舞いつつ踊る」ものもかなりあるとして疑問が呈せられていた。妥当なところである。
 皆川氏は、バリ島の儀礼を通して、そこにみられる中国的要素を探究した。すなわち、穴開きの中国銭、バロン・ランドゥン伝承とその舞踊、舞踊バリス・チナと伴奏ガムラン「ゴング・ベリ」を取り上げて、その実際の用法、映像を詳しく紹介した。
 中国の穴開き銭は古くから周辺諸国に伝わり、貨幣としてだけでなく、さまざまな用途に使われた。その一端がバリの「儀礼アイテムとしての用途」にみられる。死者を送る際にともに燃やされること、護符としての使用などは日本にも類例があり、注目される。バロン・ランドゥンは一対の人形である。それは、「祖先を象徴する人間」であり、また地域社会の問題を解決する存在でもある。そのモデルとなった女神には「港の責任者」という伝承があり、媽祖の性格も考えられるとのことである。これらに関する討議のなかで、バロン・ランドゥンの来訪のさまは東アジアの民俗に通有の翁・嫗にも通じるかもしれないとの指摘があった。バリの宗教に中国要素がみられるのは確かであるが、それが道教、儒教とともにはいってきたのか、それらをバリの民俗のなかに探る必要がある。これについては発表者みずからが明記した。もっともである。

9月16(日)
9月16日は午前、午後に、それぞれ以下のビデオ上映とそれを踏まえての討議があった。
1.  韓国蝟島送船儀礼調査(2012年)の記録映像
 2. 中国ヤオ族送船儀礼調査(2012年)の記録映像

両篇とも、一時間の編集物だが、編集は撮影者が直接担当していて、内容に過不足はなかった。全体を把握した上での編集なので、儀礼や供物の要点は押さえてあった。検討は映像を途中で止めつつ、自由討議のかたちで進行した。さまざまな視点からの質疑があった。なかには課題(宿題)として持ち越されたものもあるが、午前10時から、昼食をはさんで午後4時近くまで熱心な討議がおこなわれた。以下は、そのうちの何点かの摘記である。
 蝟島関連質疑
 1) 願堂における旗クッの箇所で、旗を通して願堂の神が船主のもとにもたらされる過程が分析された。こうした検討は映像資料ならではである。
 2) 龍王クッの映像を検討した際に、祝文の解釈で不分明な点があった。これについては課題として保留した。

ヤオ族送船儀礼質疑
 1) 湖南省藍山県荊竹村では、かつて一年に四回、除災招福のために送船儀礼がなされた。現在は春(2012年は旧3月8日)の一回だけである。それらがすべて同様になされたのか、時期はおおよそいつなのか等々、課題として残る。
 2) 鶏、とくに鶏の血の意義についての質疑。鶏は病をもたらす鬼のおそれるもの、鬼神がその血を恐れることが指摘された(余達喜)。
 3) 龍の多義的な位相について、他地域の事例との比較、議論がなされた。いうまでもなく、龍は単に水神、海神というだけでなく、祖先、地/山の神、特別な蛇としても認識されている。 
以上のほか、全体の討議では、中国の民俗の継承に関する質疑があった。江西省の儺儀の継承に関連して、「これはどこでも大きな問題となっている。都市化、高齢化、出稼ぎによる人材不足などが原因である。政府の援助もあるが、結局は、住民が主体的に解決していこうとする姿勢がたいせつ」と述べた。これは中国に限らない。韓国の蝟島など、無形文化財に選定されたものが抱える共通の問題である。
 全体を振り返ると、二日間、広く、また個別具体的に討議がなされたといえる。 (野村伸一)

会場の様子 会場の様子 (調査映像資料を見る)

写真: 会場の様子

(*)  海外調査(台湾) 【 台湾 屏東県におけるアチックフィルム関連の現地調査 】 

・2010年12月調査

・2011年12月調査

関連 海外調査(韓国) 【 昭和11年アチック多島海探訪の検証 】

・2012年2月調査

「アチックフィルム・写真にみるモノ・身体・表象」グループの本研究会報告

研究補助者の募集のお知らせ

2012年08月20日

国際常民文化研究機構では、「所蔵資料の情報共有化」業務における研究補助者を募集します。
公募要領を熟覧の上、9月3日(月)15:00までにお申し込み下さい。

公募要領はこちら

なお書類の受付、お問い合わせは下記までお願いします。

神奈川大学国際常民文化研究機構
月~金 9:00~16:00 ℡045-481-5661 内線6111

                             【9月3日をもって終了いたしました。】

公開研究会のお知らせ 「海を越えての交流-民俗、祭祀、芸能の面から-」

2012年08月09日

     テーマ: 「海を越えての交流-民俗、祭祀、芸能の面から-」
      主催: 機構共同研究 「アジア祭祀芸能の比較研究」グループ
      日時: 2012年9月15日(土) 09:30-16:30
     2012年9月16日(日) 10:00-16:15
      場所: 神奈川大学横浜キャンパス 1号館308会議室
当機構における公開研究会として通算13回目となる本研究会は、共同研究を目的とし結成された8つのグループのうちのひとつ、「アジア祭祀芸能の比較研究」グループの成果発表会となります。
二つの研究発表を含め、1930年代に渋沢敬三とアチックミューゼアム同人らによって撮影された、朝鮮多島海(1936年)、台湾パイワン族(1937年)の民俗調査*、および本研究会を主催する機構共同研究グループが2012年に行った韓国蝟島、中国ヤオ族の送船儀礼調査の記録など、貴重な写真・映像資料を見ながら討論形式ですすめられます。
ふるってご参加ください。

*「アチックフィルム・写真に見るモノ・身体・表象」グループの協力を得て、アチックフィルムより「朝鮮多島海」(1936年)、「パイワン族の探訪記録」(1937年)が上映されます。

 ■ 申し込み不要、参加無料

プログラム

アルバイト・社会人パート募集のお知らせ

2012年05月11日

国際常民文化研究機構では、アルバイト、社会人パートを募集します。
公募は4種類(№1~4)あり、それぞれ業務内容や条件が異なっておりますので、公募要領を熟覧の上、
5月21日(月)15:00までにお申し込み下さい。

公募要領はこちら

なお書類の受付、お問い合わせは下記までお願いします。

神奈川大学国際常民文化研究機構
月~金 9:00~16:00 ℡045-481-5661 内線4358

【5月21日 をもって締め切りました。】

公開研究会 「折口信夫の歌舞伎絵葉書コレクション」 (終了報告) 

2012年04月25日

テーマ: 「折口信夫の歌舞伎絵葉書コレクション」
講師: 齋藤しおり氏 國學院大學研究開発推進機構学術資料館 PD研究員
コメンテーター:小川直之氏 國學院大學折口博士記念古代研究所
日時: 2012年4月21日(土) 15:00~17:00

 去る4月21日(土) 15:00~17:00 神奈川大学横浜キャンパスにおいて、当機構の第7回公開研究会「折口信夫の歌舞伎絵葉書コレクション」を開催致しました。
 講師の齋藤しおり氏は、2007年より國學院大學研究開発推進機構伝統文化リサーチセンターで、「学術資産におけるモノと心」プロジェクトの課題のひとつ「國學院の学術資産に見る近代人文学の形成」において、折口信夫資料の展示及び研究を担当されました。この際の研究をベースに、國學院大學内に所蔵されている絵葉書資料や、歌舞伎絵葉書コレクションの写真資料を参照しながら、折口と歌舞伎の関わりなど興味深いお話をしていただきました。今回は歌舞伎に興味をお持ちの聴講者の方もおられ、貴重な資料にも関心が集まっていたようです。
 当日の発表内容の詳細については、是非添付レジュメをご参照ください。

当日のレジュメはこちら

講演の様子 講演の様子

コメントをする小川氏 会場から質問も

写真上段: 講演の様子
写真下段: コメンテーターの小川氏(左)、会場から質問も(右)

公開研究会のお知らせ 「折口信夫の歌舞伎絵葉書コレクション」 

2012年04月03日

日本における共同研究に焦点をあてた、本機構主催公開研究会の第7回目となります。 

テーマ: 「折口信夫の歌舞伎絵葉書コレクション」
講師: 齋藤しおり氏 國學院大學研究開発推進機構学術資料館 PD研究員
日時: 2012年4月21日(土) 15:00~17:00
場所: 神奈川大学横浜キャンパス16号館 視聴覚ホールB

  2007年~2011年にかけて文部科学省オープン・リサーチ・センター事業に採択された國學院大學「モノと心に学ぶ伝統の知恵と実践」で、折口信夫に関する資料展示や研究が進められました。その中で齋藤氏が担当された國學院大學内に所蔵されている絵葉書資料の整理と、これ以前から続けられている歌舞伎絵葉書コレクション2547点の研究等について発表していただきます。

■ 申し込み不要、参加無料

ポスターを見る

国際常民文化研究機構 共同研究者募集のお知らせ 【4/14終了】

2012年03月26日

標題の件につき、平成24年度の国際常民文化研究機構共同研究者の募集を行います。
公募要領は、下記添付 「共同研究者公募要領」を参照してください。

申請書の提出は、配達の証明できる日本郵便のレターパック350で、 平成24年4月13日(金)必着となります。

また、添付の「共同研究者公募申請書」Word版は、入力用です。
メールでの申請は受けつけておりませんので、ご留意ください。

■ 共同研究者公募要領

■ 共同研究者公募申請書 (PDF版)

■ 共同研究者公募申請書 (Word版)

【締め切りました】

公開研究会 「沖縄の民族学 -民俗学と社会人類学のはざま-」(終了報告) 

2012年03月14日

 去る3月13日(火)、本機構共同研究グループ「第二次対戦中および占領期の民族学・文化人類学」の共同研究会の一環として、公開研究会「沖縄の民族学—民俗学と社会人類学のはざま」を開催いたしました。当日は多くの方にご参加頂き、活発な質疑応答がなされ終了時刻を大幅に超えての実施となりました。以下、研究グループ代表の泉水英計先生の報告を紹介致します。

会場の様子

 パリの社会科学高等研究院(EHESS)日本研究所パトリック・ベイヴェール氏を招き、3月13日共同研究会当日、「沖縄の民族学—民俗学と社会人類学のはざま」というタイトルで講演をおこなった。
 ベイベール氏は1970年代後半から沖縄でのフィールドワークを手掛け、その後、歴史家としても沖縄研究を続けている。前者についてはLe Sutsu Upanka de Tarama jimaなどの業績があり、長期にわたる参与観察から得た祭祀儀礼についての民族誌的データを社会組織と世界観の相関という視点から分析している。琉球・沖縄史については、近世末から近代初めに沖縄に赴いた宣教ルイ・フィレについて、また、1930年に沖縄調査に赴き伊波普猷などと親交をもったシャルル・アグノエルについて(Okinawa 1930)、一次資料の精読にもとづいた叙述を著している。沖縄について描写した欧米人による稀観の著作を集めた資料『西洋が出会った大琉球』(全10巻)の編集も、沖縄学へのベイベール氏ならではの貢献である。
 フィールドワーカーとしての知見と歴史家としての関心が結びついたのが、沖縄における民族誌的研究の変遷をまとめた著作Assimilation from Within, Appropriation from Without(Bremen & Shimizu (eds) Anthropology and Colonialism in Asia and Oceania)である。今回の講演の内容は、この著作を発展させたものであった。

講師のベイヴェール氏(右)と共同研究グループ代表の泉水先生 講演の様子

 一方で、一般的に民俗学、社会人類学、民族学という学問分野がどのように確立され、また、現在どのような位置づけをもつかについて、欧米諸国間での比較対照を展開し、その結果、日本の学界におけるこれら諸学の発達と現状がもつ特異性が明らかにされた。他方で、沖縄学における、より近年の研究者の関心分野について言及し、著作での議論を時間的に拡張していた。沖縄以外の地域を研究対象とし、それぞれの地域での民族誌的研究の歴史に取り組んでいる共同研究メンバとの有意義な情報交換の場となった。なお、この講演は公開形式でおこなわれたため、聴衆はほぼ50名にのぼり、一般参加者からも活発な質問があった。 

写真上: 会場の様子
写真下段左: 講師のベイヴェール氏(右)と共同研究グループ代表の泉水先生
写真下段右: 講演の様子

"The Ethnology of Okinawa: Between Folklore Studies and Social Anthropology" Patrick Beillevaire

「沖縄の民族学:民俗学と社会人類学のはざま」 発表原稿を読む

公開研究会 「大学共同利用機関と共同研究 -問題発見型と問題解決型の共同研究をめぐって-」(終了報告)

2012年03月12日

タイトル  「大学共同利用機関と共同研究 -問題発見型と問題解決型の共同研究をめぐって-」
日 時  2012年3月9日 15時~17時
講 師  篠原 徹氏 (琵琶湖博物館館長)
 
 去る3 月9日、神奈川大学横浜キャンパスにおいて第7回公開研究会を開催した。
 本機構の公開研究会は「共同研究を共同研究する」というテーマで、これまで柳田國男、渋沢敬三、和歌森太郎など先人の共同研究のあり方を取りあげてきたが、今回は人間文化研究機構理事などをつとめられた篠原徹氏(琵琶湖博物館館長)を招き、大学共同利用機関である国立歴史民俗博物館の共同研究について、その理念と現実について検討した。 従来の共同研究を、①問題解決型の「求心的共同研究」、②問題発見型の「遠心的共同研究」、③サロン型の「談論風発型共同研究」に3分類し、大学共同利用機関として目指すべき共同研究のあり方として②を提唱する。 (安室 知)

日本常民文化研究所 奨励研究公募のお知らせ 【4/2終了】

2012年03月05日

国際常民文化研究機構の母体である神奈川大学日本常民文化研究所は、日本常民文化奨励研究を募集します。 詳しくはこちらをご覧ください。 → 2012年度の常民文化奨励研究の公募

【4月2日をもって締め切りました。】

公開研究会のおしらせ 「大学共同利用機関と共同研究 -問題発見型と問題解決型の共同研究をめぐって-」

2012年02月20日

本研究会は、これまでに渋沢敬三、柳田國男、和歌森太郎、梅棹忠夫などを取り上げ、日本における共同研究に焦点をあてた研究会の第7回目となります。 国立歴史民俗博物館・総合研究大学院大学の名誉教授、また、人間文化研究機構理事などを務められた篠原氏の経験をもとに下記のテーマについてお話し頂きます。

テーマ: 大学共同利用機関と共同研究 -問題発見型と問題解決型の共同研究をめぐって-
講師: 篠原 徹 氏 (滋賀県立琵琶湖博物館長)
日時: 2012年3月09日(金) 15:00~17:00
場所: 神奈川大学横浜キャンパス1号館 308会議室

◘ 申し込み不要、参加無料

☞チラシをみる

公開研究会のお知らせ 「沖縄の民族学 -民俗学と社会人類学のはざま-」 

2012年02月08日

 当機構における公開研究会として通算11回目となる本研究会は、機構共同研究「第二次世界大戦中および占領期の民族学・文化人類学」グループ 平成23年度第5回共同研究会の一環として開催されます。
 今回はパリの社会科学高等研究院(EHESS) 日本研究所より、沖縄の歴史・民俗研究を専門とされているパトリック・ベイヴェール氏をお招きし、下記のテーマで発表をお願いいたします。

テーマ: 沖縄の民族学 -民俗学と社会人類学のはざま-
講師: パトリック・ベイヴェール氏 (社会科学高等研究院 日本研究所
日時: 2012年3月13日(火) 15:00~17:00
場所: 神奈川大学横浜キャンパス 1号館308会議室)

■ 申し込み不要、参加無料

ポスターをみる

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