共同研究

4-1.アチックフィルム・写真にみるモノ・身体・表象

平成23年度 第1回共同研究会 及び資料調査(国立民族学博物館) 【トカラ列島調査関連の民博収蔵庫調査】  

日程: 2011年7月16日(土)~7月17日(日)
場所: 国立民族学博物館、収蔵庫
参加者: 井上潤、原田健一、清水郁郎、小島摩文、飯田卓、高城玲、加藤友子、小林光一郎、羽毛田智幸

 7月16〜17日に国立民族学博物館において、本年度第1回目の共同研究会を開催し、あわせて民博の収蔵標本資料に関する調査を行った。

 本共同研究では、機構全体における映像資料整理と連携しながら、映像を核にした多岐にわたる情報を統合的に整理するという文化資源化の可能性を検討している。ここで言う多岐にわたる情報とは、(1)動画フィルムと写真の映像資料を出発点として、(2)映像目録、(3)現在残されている収集品、(4)当時の調査団が残した文献資料、(5)上映会で現地の住民から新たに提供してもらった情報などが含まれる。
特に今回は上記(3)に関連して、アチック調査団による「薩南十島」(トカラ列島)調査(1934年)の口之島と中之島に地域を限定し、映像に記録されているモノと、現在、国立民族学博物館に収蔵されている当時の収集品(モノ)の対応関係を調査した。
調査の結果、いくつかの収集品と映像に記録されているモノとの対応関係が明らかになった。傾向として、16ミリの動画フィルムに「民具」といして重点的に記録されているモノは、比較的多くが収集品として残されているが、静止画の写真として記録されているモノは、ほとんどが収集品として残されていないということが明らかになった。このことは、当時の各島における調査時間や調査形態、資料収集の方針などと関係していると推量され、アチック調査団の資料観などを考えるきっかけになるとも思われる。

 また、同時に開催された今年度第1回目の共同研究会では、以下の研究発表が行われた。
飯田卓氏(国立民族学博物館)
「アチック十島調査に関わる民博の標本資料」
今回の民博収蔵庫調査に関連して、民博で進められている「アチック資料復元作業」や「扱う資料範囲の確定」、「文献に登場する十島関連資料」などが議論された。特に、保谷の民族学博物館、文部省史料館、国文学研究資料館を経て国立民族学博物館に収蔵される過程で、資料情報が一部錯綜する中、本研究会で取りあげる「薩南十島」調査時の収集品の範囲を百数十点にまで絞り込むべきことが指摘された。

 なお、今回の研究会・調査では、国立民族学博物館の協力を得て、特に民博の近藤雅樹氏(機構運営委員)には、収蔵資料に関する貴重な助言を頂いた。 (高城玲)

アチックフィルム「十島鴻爪」(口之島)の一部 民博・標本番号H0016601資料
アチックフィルム「十島鴻爪」(口之島)の一部 民博・標本番号H0016603資料
民博・収蔵庫での調査(1) 民博・収蔵庫での調査(2)

写真上段左より右下へ: 
アチックフィルム「十島鴻爪」(口之島)の一部
民博・標本番号H0016601資料
アチックフィルム「十島鴻爪」(口之島)の一部
民博・標本番号H0016603資料
民博・収蔵庫での調査(1)
民博・収蔵庫での調査(2)

☞アチックミューゼアムにおける写真資料

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調査(鹿児島県) 【 トカラ列島中之島でのアチックフィルム上映会・聴き取り調査 】 および 平成22年度 第2回共同研究会

日程: 2011年 3月 18日 (金)~ 3月 21日(月)
実施地: 鹿児島県十島村役場中之島支所(コミュニティセンター)、十島村歴史民俗資料館等
参加者: 小島摩文、飯田卓、高城玲、加藤友子、羽毛田智幸、小林光一郎、因琢哉、岡田翔平

1934(昭和9)年、渋沢敬三らのアチック調査団は、前年に竣成就航した十島丸に乗って薩南十島を訪れ、学際的な総合調査を行っている。その中には中之島や口之島も含まれ、当時の調査内容を貴重な動画や写真として記録にとどめている。

今回の調査では、昨年度の口之島小学校での上映会・調査に引き続き、日本常民文化研究所が所蔵するそうした「アチックフィルム・写真」の薩南十島の映像を地元の十島村役場中之島支所(コミュニティセンター)で上映し、関連する情報を現地の住民の方々から聴き取ることを主な目的とした。

2011年3月19日に役場中之島支所の協力を得て開催した上映会には、島民70名弱が集まってくれた。約77年前の映像に島民の方々は多大な関心を示し、当時やその後の状況に関する聞き取り調査を行うことが出来た。特に、現在中之島で保存活動が行われている島の民俗芸能(踊りや狂言)に関する映像は、今回集まってくれた島民の方々も見たことがないようなかつての姿がフィルムに記録されており、非常に貴重な映像であることが再確認された。今後は、こうした映像資料を現地に如何に還元していくことができるのか、検討していく必要があると思われる。

十島村役場中之島支所(コミュニティセンター)でのアチックフィルム上映会(撮影:因琢哉) 十島村役場中之島支所(コミュニティセンター)でのアチックフィルム上映会(撮影:因琢哉)

3月20日には中之島にある十島村歴史民俗資料館を巡検し、収蔵庫も含めて歴史民俗資料の調査を行った。

最終日3月21日には、鹿児島市内で今年度第2回目の共同研究会を開催した。(1)小林光一郎氏(常民研特別研究員)による「日本常民文化研究所所蔵アチック写真から見る渋沢敬三の資料観」という研究発表が行われたほか、(2)口之島・中之島調査及び台湾調査の資料整理について、(3)来年度の調査研究計画について、(4)来年度以降の成果取りまとめについて、報告と議論が行われた。

なお、今回の調査に際して、事前に『アチック写真Vol.4』という中之島の写真を集めた冊子を編集・発行し、それを住民に配付して聞き取り調査を行った。

今回の調査における上映と聞き取りの場面は、前年度口之島調査と同様に、全て新たにビデオ映像として記録してあり、この新たな映像も今後の研究資料として活用する予定である。 (高城玲)

写真2点ともに: 十島村役場中之島支所(コミュニティセンター)でのアチックフィルム上映会(撮影:因琢哉)

☞『アチック写真』刊行物のご案内

『アチック写真Vol.4』(PDF版)は近日中に上記ウェブサイトで公開予定。

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海外調査(台湾) 【 台湾屏東県におけるアチックフィルム関連の現地調査 】

日程: 2010年12月26日(日)~12月29日(水)
調査実施地: 台湾 屏東県 泰武郷、瑪家郷、三地門郷
参加者: 原田健一、小島摩文、飯田卓、高城玲、
      佐野賢治、小熊誠、中生勝美、菊地暁、泉水英計

 日本常民文化研究所が所蔵するアチックフィルム・写真には戦前の台湾を撮影した資料も多く含まれる。中でも、1937(昭和12)年に撮影された台湾南部の山地に居住するパイワン(排湾、Paiwan)族に関する映像は、鹿野忠雄を案内役とするアチック調査団の宮本馨太郎らによって撮影、編集された貴重なものである。
 今回の海外調査では、そのフィルム・写真に映されている台湾屏東県の山地を訪問し、フィルムや写真を現地の人に見てもらいながら、当時やその後の状況に関する聞き取り調査を行った。

 具体的な訪問先と調査の概要は以下の通りである。
(1) 屏東県泰武郷公所にて上映と聞きとり調査。80歳を超える村在住の老人らに集まってもらい、
   プロジェクターによる上映を行いながら聞き取り調査を行った。
(2) 屏東県泰武郷の山中にあるパイワン族の旧集落跡訪問と聞きとり調査。
(3) 屏東県泰武郷の元郷長宅で、近隣の老人4名に映像を見てもらいながら聞き取り調査。
(4) 屏東県瑪家郷パクヒョウの山中にある旧集落跡地を訪問。
(5) 屏東県瑪家郷のパイワン族「大頭目」の末裔宅を訪問。近隣の老人5名に、映像を見てもらい
   ながら聞き取り調査。
(6) 屏東県瑪家郷、三地門郷の行政院管轄「台湾原住民族文化園」を訪問。

 調査に際しては、台湾行政院原住民族委員会の林志仁氏や華阿財氏らに案内の労をとっていただいた。
 また、今回の調査は本共同研究班のみならず、国際常民機構の佐野氏、小熊氏の他、機構共同研究班「第二次大戦中 および占領期の民族学・文化人類学」の中生氏、菊地氏、泉水氏らの参加を得、合同で調査を行うことができた。
  (高城 玲)

屏東県泰武郷公所でのフィルム上映
(写真上) 屏東県泰武郷公所でのフィルム上映

屏東県泰武郷の山中にあるパイワン族旧集落跡での調査屏東県泰武郷の元郷長宅での聞きとり調査
(写真左上)屏東県泰武郷の山中にあるパイワン族旧集落跡での調査
(写真右上)屏東県泰武郷の元郷長宅での聞きとり調査

屏東県瑪家郷でかつて使用していた編み棒の使い方を示してくれた老人アチックフィルム「PAI-WAN」に出てくる「蓑製作」の場面
(写真左上)屏東県瑪家郷でかつて使用していた編み棒の使い方を示してくれた老人
(写真右上)アチックフィルム「PAI-WAN」に出てくる「蓑製作」の場面

屏東県瑪家郷パクヒョウの山中にある旧集落跡地から山中を望む
(写真上)屏東県瑪家郷パクヒョウの山中にある旧集落跡地から山中を望む

 

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