共同研究

台湾の「海女(ハイルー)」に関する民族誌的研究—東アジア・環太平洋地域の海女研究構築を目指して—

第10回共同研究フォーラム 台湾の「海女(ハイルー)」に関する民族誌的研究 終了報告

日程:2022年1月29日(土)13:00~17:45
会場:Zoomミーティング
参加者:昆政明(総合司会)、藤川美代子、新垣夢乃、許翠庭(ゲスト・スピーカー)、齋藤典子、許焜山、藍紹芸、張緯誌(ゲスト・スピーカー)、安室知、謝佳芸(通訳)

パンフレット

フォーラムのポスター(表)

フォーラムのポスター(裏)

 2018年4月から始動した共同研究「台湾の「海女(ハイルー)」に関する民族誌的研究」も、研究叢書(研究成果報告書)の編集・発行作業を残すのみとなった。今回のフォーラムは、台湾で「海女(ハイルー)」と呼ばれる人々に関する予備知識はほぼゼロという状態から私たちが計4年の歳月をかけて少しずつ進めてきた調査・研究の成果を発表し、参加者から多くの知識と教示をいただくための場として企画された。
 本共同研究は、2020年度末から、新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延により台湾・日本間を越境しての現地調査が行えないという憂き目に遭遇してきたが、最後の節目となる今回のフォーラムもまた日本各地に「まん延防止等重点措置」が適用されるなかでの開催となり、全面オンライン実施とせざるを得なかった。とはいえ、オンライン開催となったことが功を奏し、日本各地・台湾・韓国・インドネシアなどから約70名に参集してもらえたのは、企画者として望外の喜びであった。
 プログラムは、以下のとおりである(一部はパンフレットに掲載したものと異なる)。なお、時間の都合上、中国語による発表のみ口頭での日本語通訳をつけ、日本語による発表は通訳をつけず中国語版資料の配布でその代わりとした。質疑応答、総合討論は中国語・日本語の逐次通訳のもとおこなわれた。

1. 安室 知「開会のあいさつ」
2. 藤川 美代子「共同研究のねらい、海女とは誰か」
3. 新垣 夢乃「なにが台湾の「海女」を沖へと押し出したのか?:日本統治時代の石花菜資源をめぐる葛藤と技術の伝播」
4. 許 翠庭「台灣東北角藻類採集模式與傳統生態智慧」(日本語訳:台湾東北角における海藻採集の方法と伝統的な生態学的知識)
5. 齋藤 典子「台湾・東北角の海人(アマ)の漁撈行動と海洋資源をめぐる考察:台・日・韓の潜水採藻漁における漁場利用と漁場政策の対照比較」
6. 許 焜山・藍 紹芸「台灣東北角海女的海藻採集」(日本語訳:台湾東北角の海女による海藻採集)
7. 藤川 美代子「「よい石花菜」とは何か」
8. 映像『去海拿東西的人(海に行き、ものをとる人)』(日本語字幕版)
9. 張 緯誌「『去海拿東西的人』攝影花絮」(日本語訳:『去海拿東西的人(海に行き、ものをとる人)』撮影こぼれ話)
10. 安室 知「コメント」
11. 質疑応答、総合討論
12. 安室 知「閉会のあいさつ」

フォーラムでの討論の様子

映像『去海拿東西的人(海に行き、ものをとる人)』の上映

 質疑応答、総合討論では、「台湾での「海女」の社会的地位はどのようなものか」「日本統治時代に台湾でテングサ採集に従事していた「琉球人」とは、沖縄県内のどこの出身者が多かったのか」「台湾では生海苔を食べる習慣はあるか」「台湾におけるテングサの「商業的採集」(タンクを用いた潜水による大規模な採集)はいつから本格化したのか。そこに沖縄の人々の影響はあったのか」「「海女」の仕事は危険だと思うが、台湾の「海女」は日本でいう保険のようなものに加入しているか」「映像『去海拿東西的人(海に行き、ものをとる人)』の撮影中に、海女・素潜りの男性・ダイバー・原住民男性の水中での作業について気づいた点があったら教えてほしい」「台湾東北角におけるテングサ漁や海藻の民俗分類については詳細な報告がなされていたものの、「海女」とは誰なのかという点については謎が深まる一方だった。謎を解く鍵は、自己認識と他者表象を区別して分析することにあるのではないだろうか」といった問いが各発表者に向けられ、活発な議論が展開された。
 ご参加くださった皆さま、フォーラムの滞りない進行にご尽力くださった通訳の謝佳芸さん、国際常民文化研究機構の皆さまに心より御礼申し上げます。

(文責:藤川美代子)

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