2018年度台湾予備調査
日程:2018年7月29日(日)~8月5日(日)
調査先:台湾台北市、基隆市、新北市
調査者:藤川美代子、新垣夢乃、齋藤典子、許焜山、沈得隆、藍紹芸
■ 八斗子漁村文物館にて
■ 海に紙銭を撒き、唱え事をする女性(澳底/沈得隆撮影)
■ 木製の水中眼鏡と自家製のマスクをつけて海に潜る(澳底/沈得隆撮影)
■ 貢寮の職人に作ってもらったという「水鏡(水中眼鏡)」(澳底/新垣夢乃撮影)
■ 紫色の石花菜は水洗いと天日干しを6回ほどくり返すと白くなる(龍洞/藤川美代子撮影)
■ 旧暦5~8月は乾燥した石花菜や自家製の「石花凍(寒天)」を道端で売る(澳底/沈得隆撮影)
女性が潜って獲ったという「鉄甲(ヒザラガイの一種)」
(澳底/新垣夢乃撮影)
深夜から早朝にかけて基隆市の高速道路高架下に出現する崁仔頂魚市場(基隆/沈得隆撮影)
本共同研究の根幹を占める台湾での民族誌的フィールドワーク実施に先立ち、具体的な調査拠点をどこに定めるか検討するための予備調査をおこなった。7月30~31日は、国立台湾図書館および台北市内の書店にて関連する資料を収集。8月1日は、まず基隆市中正区八斗子漁村文物館にて許焜山氏、沈得隆氏、藍紹芸氏(=いずれも、本研究班の台湾側メンバー)より台湾北部地域の「海女」の歴史的概要について報告を受けた後、本共同研究では基隆市・新北市にまたがる通称「台湾北部・東北角」の海岸線一帯の海女文化を研究の対象とすることに決定した。1日午後~4日は、新北市貢寮区澳底・龍洞および萬里区野柳を訪れ、現在も海に潜って石花菜(テングサ)・九孔(トコブシ)・海膽(ウニ)などを獲る女性たちや、地元の漁業や民俗を研究・記録する活動に従事する人たちにお話を伺うことができた。2018年度は澳底・龍洞・八斗子・野柳を主な調査拠点と定め、各自の関心に基づいて周辺地域に足を延ばすこととした。
予備調査は短期間ながら、多方面の協力を得たおかげで今後の調査・研究の核となり得る問題が浮かび上がった。一例は以下のとおり。
1)「私は海女ではない」:日常の文脈から乖離する「海女」という呼称とあるべき「海女」像
2)「海女の技術は琉球の人が台湾北部・東北角に伝えた」:沖縄と台湾の潜水技術をつなぐ歴史
3)「男性は船でカジキやイカを、私は家計の足しに潜ってテングサを」:生計に見る家族の役割分担
4)「お父さんから潜りを習った」:潜水技術の習得と継承
5)「こちらのテングサのほうが質がいい」:海産物の質をめぐる地域の差異化
6)「このテングサは韓国でフェイスパックになる」:テングサの販路から見える世界とのつながり
7)「最近、テングサが採れなくなった」:海洋資源枯渇をめぐる複数の物語
8)「鬼月は海に入らない」:海の危険を回避するための民俗的叡智
(文責:藤川美代子)