共同研究

東アジアの伝統的木造船建造および操船技術の比較研究

中国木造船調査

日程:2016年8月26日(金) ~ 2016年9月2日(金)
調査先:中国福建省泉州市、福州市
参加者:小熊誠、織野英史、昆政明、廣瀬直樹、王蕾、姜婧、宋永和

泉州海外交通史博物館での打ち合わせ(中央:丁毓玲館長)

泉州海外交通史博物館での打ち合わせ(中央:丁毓玲館長)

実測図をもとに部分名称、建造方法を説明する張国輝氏(左2人目)

実測図をもとに部分名称、建造方法を説明する張国輝氏(左2人目)

部分名称を記入した実測図(泉州海外交通史博物館蔵の舢舨)

部分名称を記入した実測図(泉州海外交通史博物館蔵の舢舨)※クリックにて拡大

造船工程を説明する福青沃造船所社長陳楊坤氏

造船工程を説明する福青沃造船所社長陳楊坤氏

 今回の中国調査は福建省泉州市および福州市を調査地とし小熊誠・織野英史・昆政明・廣瀬直樹・王蕾が参加、神奈川大学大学院歴史民俗資料学研究科後期課程在学の姜婧・宋永和も通訳として全期間同行した。
 8月26日に成田発厦門経由で泉州市に入った。
 8月27日は泉州海外交通史博物館の丁毓玲館長および林瀚氏の出迎えを受け、今回調査の実施方法等について打ち合わせを行った。これには王連茂名誉館長および閩南師範大学王亦錚先生も同席された。打ち合わせの中で丁毓玲館長より、泉州海外交通史博物館と日本常民文化研究所との学術交流について提案があり、今年度中に同館において開催する講座・講演会への参加打診があった。
 同館での調査は前回廣瀬が実測図を作成した舢舨(サンパン)の船体細部の確認作業、および帆装部分の実測と、常設展示室内の鵜飼い用の小舟、たらい舟の実測を行った。織野は、主に櫂の実測作業を行った。
 8月28日と29日は、張国輝氏工房において小熊と昆は張氏制作の中国船模型の調査を行った。織野は張氏が使用した船大工道具の実測を行い、姜が使用法、名称確認に協力した。廣瀬と王は前回作成した実測図をもとに、張氏から各部名称、建造方法等の詳細な聞き取りを行い、宋がそれに協力した。張国輝氏工房調査には28日は王連茂先生と王亦錚先生および林瀚氏が同行し、29日は王亦錚先生が同行した。
 8月30日は泉州市から福州市に移動し、これまでの調査結果の整理と福州市内にある船舶関連の博物館等の情報収集に当たった。その結果、三坊七巷福船文化館に多くの木造船資料、推進具、写真資料が展示されていることを確認し、8月31日の福青沃造船所での調査の進展具合によっては同博物館の調査を実施することとした。 
 8月31日は福建師範大学の謝必震先生、陳傳興先生、徐斌氏の御料力(ご協力)により福青沃造船所を調査した。前回調査時は、養殖作業の時期から外れていたため、多くの木造漁船の修理が行われていたが、今回はごく少数の修理が行われていただけであった。反面、道具類の実測や聞き取り調査に十分時間を割いていただくことができたのは幸運であった。織野は姜の協力を得て船大工道具の実測作業および名称・使用法の調査を行い、廣瀬と王は宋の協力を得て、前回作成した舢舨(サンパン)の実測図をもとに、同造船所社長の陳楊坤氏より各部名称、建造方法等の詳細な聞き取り調査を行った。
 調査が一段落した後、陳楊坤氏の案内で近隣の造船所を訪問し、建造中の舢舨(サンパン)の写真撮影を行うとともに、建造方法等について陳楊坤氏から実船をもとに説明を受けることができた。
 9月1日は、福州市旧市街にある三坊七巷福船文化館の好意により、艪および中国船復元断面模型、小型舢舨(サンパン)等の実測を行うと共に、展示状況、展示パネル、展示写真等の撮影を行うことができた。
 9月2日に福州市から鉄道で厦門市に移動、帰国の途についた。今回の調査では、日本と中国の木造船建造における、船材の接合と漏水防止に関する技術の相違が明確となり、それが船大工道具の種類にあらわれていることを確認できた。また、実測図の作成が部分名称、工程の調査に有効であることを改めて認識させられた。

艪の実測作業(福州市三坊七巷福船文化館)

艪の実測作業(福州市三坊七巷福船文化館)

(文責:昆政明)

進捗状況および成果報告一覧はこちら

  • WWW を検索
  • サイト内を検索

ページトップ

神奈川大学
国際常民文化研究機構