戦前の渋沢水産史研究室の活動に関する調査研究
第4回共同研究フォーラム「再考 アチック・ミューゼアムの水産史研究 —“ハーモニアス・デヴェロップメント”の実像—」(2018年7月7日) 終了報告
日程:2018年7月7日(土)
会場:神奈川大学横浜キャンパス3 号館305 講堂
参加者:加藤幸治、小熊誠、宮瀧交二、今井雅之、安室知、増﨑勝敏、佐藤智敬、磯本宏紀、葉山茂、星洋和、今井雅之、
日高真吾、揖善継(以上共同研究者) 佐藤麻南(発表者:東北学院大学大学院文学研究科・博士前期課程)
発表風景
集合写真
2018年7月7日(土)、加藤班では共同研究の3年間の成果報告会として、第4回共同研究フォーラム「再考 アチック・ミューゼアムの水産史研究 —“ハーモニアス・デヴェロップメント”の実像—」を神奈川大学横浜キャンパス 3 号館305 講堂を会場に実施した。
フォーラムは4つの内容で構成した。第一は、研究代表者の加藤幸治による「Ⅰ 問題提起」であり、「アチック・ミューゼアムの水産史研究における『問題意識の多様性』と『同時代的な布置』」と題して、フォーラム全体の趣旨と共同研究のプロジェクトの概要説明を行った。第二は、「Ⅱ アチック・ミューゼアムの同時代的な布置」と題して、「渋沢水産史研究室による水産史研究の歴史的背景について」(宮瀧交二)、「戦前の地方農村青年をとりまく思想的・社会的状況について」(今井雅之)、「未完の筌研究にみる渋沢水産史研究室の調査法」(加藤幸治)の三つの報告を行った。ここで昼休憩となった。
午後は、第三の内容で「Ⅲ 水産史研究室の同人らにみる問題意識の多様性」と題して、「渋沢敬三と魚名研究 —その特徴と学史的意義—」(安室知)、「桜田勝徳の志賀島採集のハコフグの剥製について」(増﨑勝敏)、「宮本常一による昭和10年代民俗調査の足跡」(佐藤智敬)、「山口和雄の網漁業研究にみるアチック・ミューゼアム時代の水産史研究の位置づけ」(磯本宏紀)、「祝宮静の豆州内浦漁民史料調査にみる水産史研究の展開」(葉山茂)、「楫西光速の塩業研究にみる渋沢水産史研究室の経済史学的一面」(星洋和)、「戸谷敏之の問題関心にみる魚肥研究の位置づけ」(今井雅之)、「伊豆川浅吉の捕鯨研究と鯨肉食通信調査」(佐藤麻南、東北学院大学大学院文学研究科・博士前期課程)の報告をそれぞれ行った。
最後に「Ⅳ コメント・ディスカッション」として、共同研究メンバーである揖善継と、国際常民文化研究機構の別の共同研究(一般)「民具の機能分析に関する基礎的研究」の代表をつとめる神野善治氏と何人かのメンバーからコメントを得た。そして、登壇者全員がならび、会場を交えてのディスカッションとなった。
アチック・ミューゼアムが、水産史研究を推進していった背景として、戦時体制特有の問題や政策、対外的な関係や資源の確保、時代特有のイデオロギー等が、渋沢敬三の研究と水産史研究室のメンバーの調査活動に、どのような影響があったのかが、議論の的となった。本フォーラムで提示したこうした「同時代的な布置」は、単に学問とナショナリズムの議論に回収されないかたちで、いかに近代史および学術研究の歴史に位置づけるかも論点として浮き彫りとなり、年度末に刊行予定の最終報告書の作成の重要な論点を得ることができた。
(文責:加藤幸治)