宮城県気仙沼大島における遠洋漁業の歴史的変遷に関する研究-震災救出資料を中心として-
第5回共同研究フォーラム「気仙沼大島における遠洋漁業の歴史—漁船員たちの航路をたどって—」終了報告
日時:2019年2月10日(日)13:30~17:15
会場:仙沼大島 大島公民館 研修室
■ 大川啓氏 千葉勝衛
■ 小野寺佑紀氏 崎浜美和会による「大漁唄い上げ」の上演
■ パネルディスカッション フォーラムの様子
「学問のきびしさを学んだ共同研究」
共同研究も3年目に入ると報告書の執筆と発表会が気になり心配したり焦るようになったが、これまで収集した資料を整理して悪筆、悪文を連ねて原稿を書き大学に届けて一安心とゆったりと過ごしていた。
やがて大学からの校正ゲラ刷りが届いた。読んでみると至るところに鉛筆の注記が入っていた。文字、用語の誤記、誤用の他に統計数字の不正確さを多く指摘されてあった。それからが大変であった。原資料をまた探して確認したがやはり数字の写し間違いもあったし、原資料の間違いも発見した。それは執筆以上に時間のかかるもので、なぜ執筆前に慎重に確認しなかったのかと後悔しきり。史実を正確に伝えるため、文章も数字も吟味せねばと改めて反省させられた次第である。
こんなことで大学側には大変ご迷惑をおかけしたが、年が明けて発表会近くに印刷製本された報告書の実物が手元に届いたときは本当にほっとした。本の内容は稚拙でも、項目、表、写真などをバランスよく編集していただき、外見は私たちにとっては立派な満足できるものであった。
発表会は地元の気仙沼大島での開催としていただいたが、果たして聴衆が何人来るか心配になった。健康講座や趣味の会には多く集まるが、このテーマで、私たちの話では30人も集まったら成功ではないかと話し合っていた。
当日、入場者を数えていたが、開会前に80席は満員となり、立見席がでる程の大入りであった。この盛況ぶりに安心した私は、研究発表の時間配分を間違って予定をオーバーしてしまった。
その後の「大漁唄い上げ」の実演では、和船時代のカンバンを着て、よく響く胴間声で唄が始まったが、なんと座席からも手拍子と一緒に唄う人もでて、しばし会場は和船時代再現のステージとなったのであった。
こうして打ち解けた雰囲気の中で行われたディスカッションでもいい問題が提起され有益な話し合いが続いた。閉会のころには、外は夕やみが迫っていて、客船で帰る人は走り出していた。人々は「よかったよ」と私たちに声をかけてくださった。その言葉を聞いて私たちはこの研究をやってよかったと語り合った。
遠洋漁業は後継者不足という重大な問題を抱えている。大島からの新規学卒者の乗船はここ数年間ないとう。この本が地域の人たちに読まれ、このシンポジウムの話題が地域で語られることを期待しているものである。
(文責:千葉勝衛)