熊野水軍小山家文書の総合的研究
熊野地域(すさみ町・串本町・古座川町域)の中世石造物・城館調査
日程:2020年3月7日(土)~3月8日(日)
調査先:周参見中山城跡・周参見城跡(すさみ町)、虎松山城跡・堤の石塔群・吐生の宝篋印塔・八幡森の宝篋印塔(串本町)、西川区墓地・伊東氏屋敷跡・山手の宝篋印塔・潤野の五輪塔群(古座川町)など
調査者:坂本亮太、北野隆亮、佐藤純一
周参見城から周参見湾を臨む 虎松山城の堀切 伊東氏屋敷跡 潤野の五輪塔群
3月7日(土)から8日(日)にかけて、熊野地域(すさみ町・串本町・古座川町域)の中世城館・石造物の調査を実施した。
初日は、まず安宅氏とも密接に関わる周参見氏の城館群・石造物の調査を実施した。「安宅一乱記」にも登場する大坂殿の墓の確認をし、続けて周参見中山城跡の踏査をおこなった。その後、万福寺とその裏山にある周参見城跡の踏査をした。日置川流域(白浜町)の城館群との関係性、さらには周参見湾・稲積島を臨む立地環境などを知ることができた。
次に串本町へ移動し、久木小山家文書にも登場する西川庄司村上氏と関わる虎松山城跡・和深浦城跡の踏査を実施した。その後さらに南下し、堤の石塔群、吐生の宝篋印塔など、群として残る中世石造物の確認調査をおこなった。初日の踏査において、周参見氏のほか、紀伊半島南西沿岸部において、谷筋ごとに武士団(村上氏・田子氏・結城氏など)が拠点形成していた様相を把握することができた。
2日目は、古座川上・中流域(山間部)における武士団に関わる城館・石造物の踏査を実施した。まず前日に引き続き、村上氏の本拠である西川において村上氏墓所(石造物)の調査をした。その後、古座川町大桑へ移動し、室町期に伊豆(静岡県)から熊野へと移り、山林・田畠等を開き、明治時代まで大きな勢力を誇った伊東氏の屋敷跡の踏査をおこなった。さらに、古座川町山手にて山手の宝篋印塔の調査をした。中世古座川上流域(山間部)に拠点を置いた武士団のあり方を知ることができた。
次に熊野地域で石垣や石造物などに利用される地元産石材の採石場である宇津木石採石場跡の確認をおこなった。さらに、西向小山氏の一族がいたとも伝えられる古座川町潤野で、五輪塔群の見学をした。潤野の五輪塔は西向小山氏と古座川中流域との関係を推測させるものであるが、関連文書の確認や聞き取り調査なども含め、今後の調査が必要である。
最後に潮岬へ移動し、潮岬塔石にて八幡森の宝篋印塔、高松寺にて花崗岩製一石五輪塔の確認をおこなった。2日間の踏査により、すさみ町・串本町・古座川町における武士団(在地領主層)等の拠点とその動向について把握することができた。さらには、中世石造物の石材を押さえることで、石造遺物を中心とした紀伊半島の流通状況についても、基礎的な情報を収集することができた。
(文責:坂本亮太)