共同研究

1-3.環太平洋海域における伝統的造船技術の比較研究

— 共同研究者の連携強化に関わる 第9回公開研究会 「台湾における物質文化研究の現状と課題」の参加報告 —

日程:  2013年 3月 16日(土)
開催場所: 神奈川大学横浜キャンパス
参加者: 昆政明

 黄貞燕氏の「台湾における民俗系博物館の現状と問題」では、台湾の政治社会情勢に大きく影響される民俗系博物館の現状が報告された。特に、民俗がまちづくりのリソースと見なされ、実用的な傾向を強く持つといった状況は、日本における「まちおこし」と「博物館」の関係を彷彿とさせる。もちろんこれらを全て否定するべきではないが、黄氏の指摘にもあったが、ともすれば資料の収集や保存、研究がおろそかになる傾向にある、ということには留意する必要がある。同時にこのことは、報告にあった学芸員のポスト不足や、収集展示資料に専門的知識を有する学芸員が少ないといった問題にも大きく関係している。しかし、スライドで紹介された、近年開設の国立や県立博物館では、充実した民俗展示が行われている。このような大規模な展示を構成するには、多大な準備期間と作業量が必要であったと考えられる。博物館展示を作り上げる過程の経験や蓄積が、民俗民具研究の進展貢献し、研究者の広がりをもたらすことを期待したい。 (昆 政明)

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公開研究会「台湾における物質文化研究の現状と課題」 (終了報告)

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— 共同研究者の連携強化に関わる 第9回公開研究会 「台湾における物質文化研究の現状と課題」の参加報告 —

日程: 2013年 3月 16日(土)
開催場所: 神奈川大学横浜キャンパス
参加者: 板井英伸

  「琉球」「沖縄」と呼ばれる島々の民俗の多様性については今さら多言を要さないが、たとえば考古学の成果から見える宮古・八重山群島の物質文化と以南の出土遺物との共通性は、その多様性の淵源のひとつを解き明かしてくれていた。民具のような考古学上の出土遺物以外の物質文化も、比較の対象として極めて重要であるはずである。しかし、民俗全般についての両者の比較はすでに実績も積み上げられている反面、こと民具・物質文化については、墓や呪符、一部の漁具といったごく少数の事例を除き、いまだ十分とはいえないように思う。
 今回の研究会にはまさにその現地・台湾で物質文化研究に携わるお二方がおいでになり、知己を得ることができたわけで、まことにありがたい機会になった。会の大きなテーマが台湾における民具・物質文化研究のこれまでの進展と現状を概説的に紹介することにあったため、個々の事例にまで踏み込んだ議論ができたわけではないが、これを機会に、現地の貴重な情報を得ることにはじまって、そうした試みもおこなってみたいと思う。 (板井 英伸)

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「環太平洋海域における伝統的造船技術の比較研究」グループ 成果発表会 ~南と北の舟:日本列島の伝統的舟作りの系譜を探って~

日時: 2013年2月16日(土) 09:30~16:30
会場: 神奈川大学横浜キャンパス 1号館308会議室
参加者: 後藤明、大西秀之、門田修、洲澤育範、昆政明、板井英伸

  本班の趣旨である環太平洋の伝統的な船作りについて、初めての本格的なシンポジウムであった。
  午前中は本班のみのセッションで、まず後藤が班の趣旨説明もかねて、日本列島の古代に存在していた船の種類の推測、さらに日本の北方や南方に連なる地域の船について概観した。そのあと日本列島の最古の人骨・沖縄の港川人の起源地とされるスンダランドに存在していたであろう船として樹皮船と竹筏について論じた。
  次に門田が南方のふねの代表としてミクロネシア・カロリン諸島・ポロワット島における航海カヌー製作の全行程を撮影した120時間にわたるビデオのダイジェストを披露した。
  さらに洲澤は函館の市立博物館所蔵のバイダルカ式カヤックの系譜につてい、アリュートやイヌイットの船を概観しながら論じた。会場からは日本や周辺地域の船の起源や分布について熱心な質問が寄せられた。

  午後は民具の名称班との合同のセッションであった。本班からは昆が参加し、青森を中心とした北日本の和船の名称について長年の調査結果を披露した。船は機能、形、構造、乗組員など脈絡に応じて様々な呼び名が付与されるという事実は、昨日の本班の板井報告(サバニの名称)ともあわせ、民具名称班との連携をさらに強めていく必要性を感じさせた。その後、民具班の真島の発表は日本の和船の分布研究の一端を披露したものであり、全体として日本の伝統的な船の研究について新しい視点を開くことができたと考える。 (後藤 明)

当日会場の様子

【 事務局より 】
  当日回収されたアンケートや会場で集められた質問用紙の質問の中からいくつか、発表者の洲澤氏より回答を頂きましたので、ご紹介いたします。 
  尚、洲澤氏からは回答にあたって、下記のコメントを頂いています。 

    「私は北米の伝統的なカヤックやウミアク=獣皮舟、バークカヌー=樹皮舟を造り、漕ぐ職人です。 
    文献などからの論証は不得手です。」

Q.                                                                                                                                       
   洲澤様; ○型、□型 肋骨では可なり強度に差異があると思いますが、重量、航海域に両者の差異はあるのでしょうか。 お教えください。                                                                        
A. 
   カヤックの肋骨の形状の違いよる強度の差異はあるでしょう。しかし、強度にもっとも影響するのは形状ではなく、木目取りの方法、樹種の選択によるところが大きいです。
   肋骨の形状の違いよる、航海域の差異はほとんどないようです。○型の肋骨を持つカヤックは、私が知る限りウナンガン=アリュートのものだけです。カヤックの重量は軽く、荒れた海上では船体がしなり、波の衝撃を吸収し、滑るように進みます。
(洲澤 育範)
Q.                                                                                         
   アリュートのカヤックについて; 船首を二股にしている理由は何ですか。                                  
A. 
   幾つかの理由が言われていますが、どれも定かではありません。
      1   追い波の中で船首の浮力を保ち、スピードを維持するため。
      2   部族の象徴。
      3   呪術的な象徴。
(洲澤育範)
Q.                                                                                 
   洲澤先生;   カヤック、カヌーの名は、昔、本で伊豆半島の狩野川で作られた舟の名が[南方?]に拡まったと読んだが、これもその系統ですか。                                                                      
A. 
   「日本の地名・谷川健一著」でしょうか? 私には分かりません。
   ただ系統として分類するなら、私は、舟は「浮く器」と「海洋ほ乳動物を模した物」に分類しています。カヤックは「海洋ほ乳動物を模した物」の範疇だと考えています。
 (洲澤 育範)
Q.                                                                                                          
   洲澤先生;   北方の船は、一番古いのでいつごろからですか。                                        
A.     考古学的な実証が難しいので定かでないようですが、昨今の通説では4,000年〜5,000年前程度と言われています。
   木材の加工は局部磨製石器があれば可能だと思えるので、もっと時代を遡れる可能性はあると考えます。
(洲澤 育範)
Q.                                                                            
   極北のカヤックの製作、大変面白く思いました。カイの実物等も興味をもちました。カイの先方に[手書きの図あり]と木をつないでモヨウのようになっていましたが、実際につないだものですか。                                          

A. 
ベンガラの色のチキリ型の部位は文様で、材をつないではいません。
     この双刃櫂は私が復元しました。実物は1826年アリューシャン列島のウナラスカ島で収集され、現在はフィンランドのヘルシンキ国立博物館に収蔵されています。
   文様の意味は不明です。黒色はウナンガン=アリュートが畏敬するラッコを表し、ベンガラ色は血を表しています。
   二色の色の組み合わせの意味も不明です。

(洲澤 育範)

 

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平成24年度 第2回共同研究会

日時: 2013年2月15日 13:30-17:00
場所: 神奈川大学 歴民会議室
参加者: 後藤明、大西秀之、門田修、洲澤育範、昆政明、板井英伸、川田順造

  まず川田が日本海側の和船調査の報告を行った。その後川田の調査をうけて板の接合を行うチキリやタタラの分布やその定義について全員で討論した。次に板井が沖縄の「サバニ」という名称の意味、その使われ方の実態について問題提起を行った。板井によるとサバニとは厳密な形態や機能を持った船を意味すると言うより何らか「聖別」された船というニュアンスも含まれているという指摘があり、各自のフィールドから比較事例を出して討論した。
  そのあと来年度に上程する本班の報告書について、そのテーマ、枚数、書式、などについて話し合い、基本的な線が決定した。 (後藤 明)

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