共同研究

4-1.アチックフィルム・写真にみるモノ・身体・表象

— 共同研究者の連携強化に関わる第5回国際シンポジウムの参加報告 —

日程:2014年3月9日(日)
場所:神奈川大学 横浜キャンバス
参加者:原田健一
「渋沢敬三の資料学—日常史の構築—」に参加して
今回のシンポジウム「渋沢敬三の資料学—日常史の構築—」の基調講演のヨーゼフ・クライナー「ヨーロッパにおける日本関係コレクション—美術・工芸から民具へ—」は、欧米における日本研究の展開とモノ資料の位置づけをめぐって行われ、1930年代を中心に行われた渋沢敬三とアチックミューゼアムが主導したモノから日常生活と、その社会、文化を捉えようとする試みを、どう位置づけられるかについて、ある示唆が行われたと考えられるが、直接的な言及はされなかった。
 また、その後の報告について、曹幸穂「伝統的農具にみる中国農民史」、ジョセフ・キブルツ「お札の世界-世界のお札」、宮本瑞夫「映像に見る常民生活の伝統と再生」、福岡正太「音盤に聴く東アジアの音楽交流—日本コロムビア外地録音資料を例に—」、 崔順権「農村の生活文化調査と持続的な記録の必要性—全羅南道長興郡上金マウルの事例を中心に—」のうち、同様に直接的な言及があったのは、曹、宮本のみであった。
 ここでの議論の中心点は、渋沢敬三とアチックミューゼアムの仕事を分析、検討することより、渋沢敬三の構想を現在の調査、研究状況のなかで、展開したらどうなるだろうかという議論であった。渋沢が1930年代に行った破天荒な試みを、現在行ったらどうなるかという観点である。その点では、極めて野心的な企画だった。
 いくつかの問題、テーマの掘り下げが、最後のディスカッションで行われるべきだったのかもしれないが、時間的な都合もあり、十分検討されなかったことは残念であった。
 崔吉城は、アチックミューゼアムの仕事の国際化ということは、どういうことなのかという問いを設定したが、興味深い観点だと思った。しかし、こうした問いには、いくつかの迂回路が必要だとも思った。これを、学際的な研究という意味で考えたとき、一つには少し大きな地域性、例えば東アジアという枠の中で、ナショナルな地域を越えた比較、連携がどう可能なのか、という問題として考えられるかもしれない。
また、二つには、従来から言われているいくつかの分野の異なった研究領域を越えた連携であるが、ここでの閾として、近代以降の視聴覚メディアの位置づけを問題にすべきかと思った。渋沢らが1930年代に行った時には、写真や映画、レコードなどは調査の道具として位置づけてさほど問題が生じない段階であったが、現在において、これらのメディアは日常生活に普及し、佐藤健二が指摘するように、例えば「ケイタイ」も民具としてある状況といえる。調査道具がそのまま、生活具である民具であることを、どう捉えるかという問題である。
さらに、こうした日常生活の悉皆的調査行う場合、崔順権の「生活文化調査」が国立民俗博物館という国家的なプロジェクトとしてでないと成立しにくいことをどう考えるのか、などなど問われることになると思った。
というわけで、私の頭のなかには、いくつかの問いが交叉したのだが、多分、参加した人びとも、いくつかの反響する問いがあったろうと思われる。そうした問いを、どんな風に、共有することになるのか。まだ、問いが続きそうである。

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共同研究成果発表会「ビジュアル資料と渋沢敬三-アチックフィルム・写真からの展望-」 参加報告

国際常民文化研究機構 共同研究グループ 成果発表会
 日時: 2014年2月22日(土) 10:00-17:00 
 会場: 神奈川大学横浜キャンパス 24号館105講堂
     【Part1】 調査研究の概要と現地からのコメント
     【Part2】 研究発表
     【Part3】 コメントと総合討論



~共同研究成果発表会「ビジュアル資料と渋沢敬三-アチックフィルム・写真からの展望-」 参加報告 ~

高城玲

 ■ 国際常民文化研究機構 共同研究 成果発表会
「ビジュアル資料と渋沢敬三─アチックフィルム・写真からの展望」終了報告
 共同研究の成果発表会「ビジュアル資料と渋沢敬三─アチックフィルム・写真からの展望─」を2014年2月22日に神奈川大学で開催した。
 全体の構成は以下の通りである。
Part 1 調査研究の概要と現地からのコメント
 高城玲(神奈川大学)
  「方法としてのアチックフィルム・写真─ビジュアル資料と現地上映会─」
 日高松行(鹿児島県十島村立口之島小学校前校長) 
  「現地上映会開催地(鹿児島県十島村)からのコメント」
 林志仁(台湾行政院原住民族委員会)
  「現地上映会開催地(台湾屏東県)からのコメント」
Part 2 研究発表
 原田健一(新潟大学)
  「アチックミューゼアム後期における『十嶋鴻爪』『パイワン族の採訪記録』の問題と課題」
 井上潤(渋沢史料館)
  「渋沢敬三の画像・映像資料認識」
 小島摩文(鹿児島純心女子大学)
  「アチックフィルムにみる民具」
 清水郁郎(芝浦工業大学)
  「十島村の住居空間の現在—口之島を中心に—」
 羽毛田智幸(横浜市歴史博物館)
  「薩南十島調査とその後への影響」
 小林光一郎(日本常民文化研究所)
  「アチックミューゼアムの研究における渋沢敬三のポジション—イトマン・出漁・移動を事例に—」
Part 3 コメントおよび総合討論
 須藤功(民俗学写真家) 
  「コメント」
  総合討論

 今回の成果発表会は国際常民文化研究機構の共同研究のひとつである「アチックフィルム・写真にみるモノ・身体・表象」班の研究成果として開催したものである。
 本共同研究では、神奈川大学日本常民文化研究所が所蔵する1930年代を中心とする「アチックフィルム・写真」を対象に調査研究を行ってきた。特に撮影された現地で新たに現地上映会を行いつつ調査を進めたことに最大の特色があると言えるだろう。
 本共同研究班ではアチックフィルム・写真の中でも、1934(昭和9)年の薩南十島調査時と1937(昭和12)年の台湾パイワン族調査時のビジュアル資料をまずは焦点化することとなった。
 このことを反映して、今回の成果発表会Part 1では上映会を開催した2つの地域(鹿児島県十島村、台湾屏東県)からそれぞれ日高松行氏と林志仁氏をお招きし、現地の住民から見たアチックフィルム・写真資料と現地上映会という方法に関するコメントを述べてもらった。
 Part 2の研究発表でも、アチックフィルム・写真というビジュアル資料を題材に、共同研究での現地上映会や現地調査を踏まえた研究発表が個々になされた。
 Part 3では民俗学写真家の須藤功氏からのコメントを受けて、現地上映会という方法、ビジュアル資料に記録されるモノへの視線、アチック調査におけるビジュアル資料の位置づけなどに関する総合討論が行われた。特に、須藤氏も強調されたように、フィルムや写真というビジュアル資料を、研究者のみならず現地の住民やそれ以外の人々にも現在に生かしていくことの重要性や、資料の文化資源化/社会化の必要性が改めて確認された。
 なお、本共同研究班の成果の一部は2014年3月刊行の『国際常民文化研究叢書8』における[資料編]にまとめられる予定である。 

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