民具の機能分析に関する基礎的研究
意見交換(2):調査方法についての打ち合わせ
日程:2017年8月23日(水)
会場:武蔵野美術大学
参加者:神野善治、宮本八惠子、長井亜弓
柄の動きのパターン化など、機能をどう分類していくべきか、試行錯誤している。
現在作業チームで取り組んでいる「柄」および「棒」の機能分析の方法について意見交換を行った。宮本氏は「柄」自体の動きだけでなく、補助動作をしている手の動きを合わせて検討すべきと指摘。柄の握り方は固定とは限らず、例えば「からさお」の場合、叩きつけたあとに補助する手が移動していることなどに言及した。
なお、宮本氏には、造詣の深い「染織」分野のうち、機織りに使われている「棒」の機能について調査・分析していただけないかと提案した。
また、この日は意見交換ののち、「柄」の<長さ>に着目した比較表の見直しを行い、<動作・動き>に着目した分類に作りかえる作業を実施。暫定的に10パターンほどの動きに分類し、さらに練り直していく予定である。
(文責:神野善治)
第1回共同研究会
日程:2017年6月19日(月)
会場:神奈川大学国際常民文化研究機構会議室および日本常民文化研究所会議室
参加者:神野善治、佐野賢治、眞島俊一、山田昌久、山川志典、佐々木長生、川野和昭、鍋田尚子、長井亜弓、矢田部英正(講師)
砺波の再現映像をもとに、意見を交わす(第1部)
矢田部氏のレクチャーに聞き入る(第2部・日本常民文化研究所会議室にて)
<第1部 14:00 ~16:00 >
(1)2017年度共同研究の概要
本プロジェクトの共同研究者および研究協力者が一堂に会する最初の共同研究会。プロジェクトリーダーの神野から、立ち上げの趣旨や全体構想などについて説明を行い、共通認識とするための意見交換を行った。
(2)栃波郷土資料館民具コレクションについて
作業チームが基礎資料として選んだ『砺波の民具』について解説。砺波の農作業を再現した映像「富山県砺波地方の昔の米作り」(砺波郷土資料館作成)を見ながら、身体動作なども含めて確認していった。
(3)分析方法の試作について
作業チームが『砺波の民具』から抽出した「柄」のある民具一覧を提示。「柄」の機能について整理・分析を行う視点について意見を求めた。
<第2部 16:00~17:30>
公開講演「坐り方と椅子のデザイン~身体技法論をめぐって~」
講師:矢田部英正氏(造形作家・日本身体文化研究所主宰)
本プロジェクトが目指す民具の機能分類の視点のひとつに、人間の「身体技法」とのかかわりがある。そこで、体育学の分野から人体の「姿勢」に着目し、世界各地の身体文化を研究している矢田部英正氏をゲストスピーカーに迎え、身体技法の視点からお話を伺った。
講演はフランスの社会文化人類学者で『身ぶりと言葉』の著者ルロワ=グーランの理論の紹介から始まり、西洋と日本における身体へのまなざしや、服飾、歩行法の違い、日本人の坐り方の変化等々多岐にわたった。「身体技法」から民具を観るという矢田部氏の研究方法は、参加者各位に新鮮な気づきをもたらし、今後の研究に新たな視点を与えてくれた。ここで詳述はできないが、いずれ報告書の中で本講演の一部を紹介できればと考えている。
(文責:神野善治)
第1回砺波調査:基礎資料選定および協力要請
日程:2017年5月23日(火)
調査先:砺波民具展示室、砺波郷土資料館
参加者:神野善治、長井亜弓、齊藤恵子(砺波)、安カ川恵子(砺波)
■ 砺波民具展示室。かつての広いランチルームが圧巻の展示収蔵スペースとなっている
■ 教室として使われていた校舎3階は、分野別の収納展示スペースに
砺波郷土資料館。建物は明治後期に建設された中越銀行本店の建物を移築したもの。内装もそのまま生かし、企画展示等で活用。
「民具の機能分類」に挑戦するためには、まず「民具の機能とは何か」を改めて問い直す必要がある。そのための基礎資料のひとつとして、すでに平成18(2006) 年に600頁に及ぶ民具目録『砺波の民具』を制作し、民具約8,500点を収蔵する砺波郷土資料館に協力を求めることにした。同館収蔵品のうち、6,900点は平成29(2017)年3月3日に国の重要有形民俗文化財に指定されており、基礎資料とする条件の整ったすぐれたコレクションであることがその理由である。
調査当日、まずは、砺波郷土資料館主幹の齊藤恵子氏の案内で、「散村(散居村)」として知られる砺波の集落を概観。砺波市立庄東小学校3階フロア全体を使用し、展示型の収蔵庫となっている「砺波民具展示室」では、実際の民具を前に、『砺波の民具』目録作成の中心メンバーだった安カ川恵子氏とともに意見交換を行い、本プロジェクトへの協力を要請。ご快諾いただいた。
今後本プロジェクトでは作業チームを設け、「砺波の民具」をもとに、個別の民具の「機能」を抽出し、整理する作業を通して、民具の構造や素材、形態との関係を見出すことを目指す予定である。
(文責:神野善治)
意見交換(1):準備打合せ
日程:2017年5月12日(金)
会場 :武蔵野美術大学
参加者:神野善治、山田昌久、長井亜弓
第1期(2009年度~2013年度)に行った「民具の名称に関する基礎的研究」では、民具の比較研究発展のために、かねてから求められてきた「標準名」の検討に取り組んだが、地域ごとの民具の名称は方言で多様に呼ばれ、また交錯しており、標準的な名称を定めることが原理的に困難であることを確認し、検索タグとしての「共通名」の可能性を探った。
第2期(2017年度~2019年度)における今回の共同研究では、民具を機能(あるいは形態)から分類する手法を開発することで、比較研究のための手がかりが得られないかと考えている。3年という限られた研究期間内に一定の成果を挙げるため、何をどこから始めるか、本プロジェクトを立ち上げた神野の構想を披歴するとともに、実験考古学を専門とし、「時間軸」で民具を捉えてきた山田昌久氏の意見を伺い、全体の見通しについて意見交換を行った。「民具の扱いに関して身体動作で説明できないか」「形と機能の微妙な違いを見ていけないか」、素材や形態と構造の問題等々、今後研究を進めるにあたっての重要な視点が確認できた。
(文責:神野善治)