本研究は,伝統船舶の製作やその操船術・航海術に関する学術調査の蓄積の上に立ち,先住民文化復興の一貫として再構築されてきた現代のカヌー製造技術や航海術が,環太平洋の住民中にどのように伝授・教育されてきているのかを,近年の先住民運動との関連で実証的に捉え、日本各地で試みられている伝統的船舶の復興建造も先住民運動のような国際的な脈絡で位置づける。さらにこのような「カヌー・ルネサンス」の動きが日本のみならず、国際社会にどのようなインパクトを与えているかを現代の問題として提示する。
具体的には、環太平洋地域における伝統的船舶(船)製作に関する比較研究を行うと共に、シンボル性の高い船の文化的意義について考察する。本研究は,造船に焦点を当てると同時に、魚や方位など海洋文化に関する民族名称,漁具や漁法,神話や信仰などの検討も行い、海と人間の関係を未来志向観点から取り上げてゆく。さらにオセアニアや北米各地で相互刺激のもと勃興しているカヌーによる先住民主体の文化復興の動向を現地調査にて明らかにするなど、伝統的船舶の持つ今日的意味についても考える。
本研究の特長は、研究者のみならず、海洋映像を数多く撮影してきた映像作家や船大工ら実際の船作りに携わる人々も研究者として加わっていることであり、彼らとの共同作業の中で研究を遂行してゆく。
公開研究会
公開研究会「南と北の舟:日本列島の伝統的舟作りの系譜を探って」終了報告
合同公開研究会「日本の船-技と名称-」(「環太平洋海域における伝統的造船技術の比較研究」グループ・「民具の名称に関する基礎的研究」グループ/2013年2月16日)
国際常民文化研究叢書5
氏名 | 専門 | 所属機関 | ||
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代表者 | 後藤 明 | ごとう あきら | 海洋人類学 | 南山大学 |
副代表者 | 平井 誠 | ひらい まこと | 人文地理学 地誌学 | 神奈川大学 |
共同研究者 | 赤羽 正春 | あかば まさはる | 民俗学 考古学 | |
共同研究者 | 石村 智 | いしむら とも | 考古学 | 奈良文化財研究所 |
共同研究者 | 板井 英伸 | いたい ひでのぶ | 物質文化論 | 沖縄大学地域研究所 |
共同研究者 | 大西 秀之 | おおにし ひでゆき | 人類学 | 同志社女子大学 |
共同研究者 | 川田 順造 | かわだ じゅんぞう | 人類学 | 神奈川大学 |
共同研究者 | 昆 政明 | こん まさあき | 民具学 | 神奈川大学 |
共同研究者 | 深澤 芳樹 | ふかさわ よしき | 日本考古学 | 奈良文化財研究所 |
共同研究者 | 門田 修 | もんでん おさむ | 映像作家 | (有)海工房 |
研究協力者 | 洲澤 育範 | すざわ いくのり | 北米のカヤック、 カヌー復元研究 | 伝統シーカヤック造舟所 イサナ・カヤック |
研究協力者 | シャマン・ ラポンガン | Syaman Rapongan | 台湾タオ族の船大工および海人作家 | |
研究協力者 | 宮澤 京子 | みやざわ きょうこ | 映像制作 | (有)海工房 |