第2回国際シンポジウム 公開研究会・シンポジウム雑感
国際常民文化研究機構 第2回国際シンポジウム “モノ”語り-民具・物質文化からみる人類文化-
日時: 2010年12月11日~12日
今回のシンポジゥムには、国際常民文化研究機構より3班が参加した。日頃は個別に研究会や調査を実施している各班が、このような形で、お互いの活動を知り交流することができたことは収穫であり、刺激となったと思われる。また、2日目のセッションも、中国文化の東アジアにおける影響と今日的意義をテーマの一つとする当班としては、本場の中国人研究者お2人による最新の研究状況(例えば非物質文化遺産と物質文化との関係性)をご教示いただけたことも通常の研究会では得がたいものであった。今後は、小川直之先生による総括でもご指摘いただいた、国境という枠にとらわれないモノ研究を目指し、共同研究を推進していきたい。
❂2日目 セッションII 「民具からみる東アジアの比較文化史」❂
(東アジアの民具・物質文化からみた比較文化史研究班 代表 角南聡一郎)
平成22年度 第2回共同研究会
日程: 2010年 10月 16日 (土)~ 10月 17日 (日)
開催場所: 国立民族学博物館
参加者: 小熊誠、志賀市子、槙林啓介、角南聡一郎
10月16日は、国立民族博物館の近藤雅樹先生・野林厚志先生に、アチック資料についての最新状況についてご発表いただいた。
まず、近藤先生からは、2001年に国立民族学博物館などで開催された企画展『大正昭和くらしの博物誌 ─ 民族学の父・渋沢敬三とアチック・ミューゼアム』の映像をまじえながら、アチック資料のその後についてお話いただいた。
続いて、野林先生には、順益台湾原住民博物館で開催された民博所蔵台湾資料(アチック資料も含む)の里帰り展示でのご経験をふまえて執筆された論文、「文化資源としての博物館資料—日本統治時代に収集された台湾原住民族の資料が有する現地社会での意義—」(『国立民族学博物館研究報告』34巻4号所収)をベースとしながら、アチック資料の今後についてご発表いただいた。
続く17日には、近藤先生のご案内で、収蔵庫内及び展示室のアチック資料を見学し、アチックが収集した資料の全貌を知ることができた。これをふまえて、本グループにおいて各個人の研究成果とどのようにリンクさせるかについて検討をおこなった。 (角南聡一郎)
平成22年度 第1回共同研究会
日時: 2010年7月18日(日)13:00~18:00
場所: 神奈川大学 国際常民文化研究機構 27号館201号室
参加者:小熊誠、何彬、朽木量、蔡文高、志賀市子、芹澤知広、槙林啓介、角南聡一郎
2010年度第1回目の共同研究会を2日間にわたり、神奈川大学で開催した。
それぞれの研究・調査報告を行い、相互の進捗状況を確認した。
また、今年度より新規参加の志賀氏には、研究計画の報告をお願いした。
報告の内容は次のとおりである。詳細は添付報告書を参照。
中国敢闘中国広東省汕頭および潮州における位牌調査 (小熊誠)
現代台湾(中国)における「神像」-形象と意味の多様化(志賀市子)
ベトナム・ハノイ旧市街地区における華人関係施設と工芸品の調査(芹澤知広)
2009年度研究活動報告および2010年度研究計画(槙林啓介)
海外調査(ベトナム)
日程: 平成22年3月26日(金) ~ 平成22年3月31日(水)
実施地: ベトナム国ハノイ市、ベトナム民族学博物館他
実施者: 芹澤 知広
ベトナムの首都ハノイに出張し、ハノイの旧市街地区を中心に、クァンニン省、フンイェン省も訪れて実地調査を行った。対象としては、看板や墓石などの工芸品と、漢字などの中国からの影響に焦点をあてた。
ハノイ旧市街地区は、「36通り」と総称されるように、業種別に商店が固まった通りが多くあり、20世紀前半の建築物も比較的多く残されている。そのなかで、とくに広東人の会館がかつてあり、輸入食品を扱う店舗が並ぶ、ハンブオム通りを12年ぶりに再訪したところ、歴史文化遺跡に指定されている「白馬廟」の祭礼を偶然に見ることができた。また同じ通りには、修復を終えて公開されたばかりの「関帝廟」があり、日本の建築学者が町並み保存について発表するシンポジウムが行われていた。
市の郊外にあるベトナム民族学博物館も、12年ぶりに再訪したが、野外に新たに民家が移築されていた。とくにキン族(ヴェト族)についての展示では、伝統的な工芸が重点的にとりあげられており、興味深かった。滞在中、関連する英語とベトナム語の書籍も多く購入した。 (芹澤 知広)
海外調査(中国)
日程: 2010年3月23日(火)~ 3月29日(月)
訪問先: 中国浙江省
実施者: 何彬
中国浙江省、とくに温州周辺では、かつて葬儀を盛大に行い、有名な地面墓「椅子墳」を築く慣習が伝承されていた。その墓の形状から現地の他界観、祖先観などが伺える。今回の調査は、その地面に築いた巨大な墓「椅子墳」の現状及び現在都市化された温州地域の墓の変遷について調査を実施した。 (何彬)
海外調査(中国)
日程: 2010年2月24日(水)~3月5日(金)
実施地: 中国(アモイ市・長汀市・スワ頭市・潮州市)
実施者: 蔡文高
アモイ市・長汀市・スワ頭市・潮州市における葬祭用具の調査を実施した。 (蔡文高)
海外調査(韓国)
日程: 2010年2月8日(月)~ 3月8日(月)
訪問先: 大韓民国 ソウル大学(博物館、中央図書館、奎章閣、人類学科) 成均館大学(博物館)、国立民俗博物館
実施者: 太田心平
神奈川大学日本常民文化研究所が所蔵するアチック・ミュージアム関連の資料は、アチック・ミュージアムの同人たちが韓国・朝鮮や旧満蒙地域で1930年代に行った民俗調査の記録や成果を含み、韓国・朝鮮研究においては、学史研究のうえでも、過去史料としても、貴重なものである。
今回の調査では、アチック・ミュージアムの研究団が同じ時期に採集していながら、日本常民文化研究所のアチック・ミュージアム関連資料に含まれず、現地に残されることとなった資料の一部について、その内容と所在を調べた。その過程では、同時期に他の経緯で収集された資料も一部で閲覧することが出来た。また、そうした資料の管理や分析を行っている担当者たちを訪ね、インタビュー調査を行うことによって、資料がそこに残された経緯を探索した。
この結果、ソウル大学が所蔵している人形などの旧満蒙地域の民具や、旧満蒙地域および韓国・朝鮮を写した大量の写真乾板が同じ調査団の採集品と記録物であると推測されていることがわかった。この内容は、昨年度に出版された同博物館の図録に、すでに記されていることもわかった。ただし写真乾板については、写っている町並みや人びとの服装などの点で、日本常民文化研究所の資料と時代的齟齬がないか、つきあわせて検討する必要がある点を指摘することが出来た。
また、同じ調査団のものではないかとこれまで情報が寄せられていた成均館大学所蔵の資料が、まったく違った経緯で採集されたものであることを確認することも出来た。そして、国立民俗博物館が所蔵する故・宋錫夏氏(民俗学者)の遺品資料と、アチック・ミュージアム関連資料とをつけ合せて類似や相違を探す作業の必要性など、今後の調査方針を立てることも出来た。 (太田心平)
海外調査(中国)
日程: 2010年3月1日(月)~ 3月5日(金)
訪問先: 中国広東省汕頭市・潮州市
実施者: 小熊誠
東アジア各地域における位牌の形態および祭祀方法の比較研究をテーマとする。今回は、広東省汕頭市・潮州市における客家集団の位牌調査を行った。 (小熊 誠)